本学府は、情報理工学専攻、電気電子工学専攻の2専攻から構成されており、以下のような教育を担当します。
情報理工学専攻:情報理工学専攻では、自然や社会・人間にかかわる様々な「情報」現象の性質を、形式と意味内容の両面から究明する新しい学問分野である情報理工学を体系的に教育研究することにより、高度情報化社会のための先端技術を開発し、国際的視野を持って情報理工学における新たなビジョンを示すことのできる人材を養成します。
電気電子工学専攻:電気電子工学専攻は、電気・電子・通信工学の高度な基礎知識を体系的に理解し、データサイエンスなどの情報技術も使いこなす専門力に加えて、独創力(考え抜く力)・企画力(考えを形にする力)・説得力(考えを人に納得させる力)を持ち、情報通信分野およびエネルギーを中心とした社会インフラシステム分野において,高度な専門的知識からの発想力で複雑化する問題の解決に取り組み、Society5.0など社会の変化に応じた新しい研究開発・実現を先導的に行うことができる人材を養成します。
専攻名 | 博士課程後期 | 修士課程 |
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情報理工学専攻 | 29 | 105 |
電気電子工学専攻 | 16 | 65 |
総計 | 45 | 170 |
学府・研究院制度は、学校教育法の改正に伴い、平成12年度に全国の大学院としては初めて九州大学で全学的に実施された新制度です。この制度は、重点化された大学院研究科の教育と研究の機能を分離したもので、九州大学では大学院を、教員が所属し研究活動を行う「研究院」と、大学院教育を行う「学府」とに分離しました。従来の「専攻」という呼称は、学府にのみ残り、研究院では「部門」と呼んでいます。
このように研究と教育を分離したメリットは大学院組織の柔軟性を増すことにあります。その点に関し、本研究院が提案し、平成13年度から発足した「システムLSI研究センター」は、本研究院の教員のほか工学研究院、経済学研究院の教員が参加して構成される新しいタイプの全学的研究施設であり、その活動が全国的に注目を集めています。
平成15年4月には、本制度を活用した初めての学府「システム生命科学府」が誕生しました。この学府は、「生命情報科学」、「生命工学」、「生命医科学」、「分子生命科学」および「生命理学」の5大講座から構成され、情報科学、理学、工学および生命科学を融合し、これからの総合生命科学を担う人材の教育を行っています。また、平成21年4月には新たな科学的な知の統合と創造を目指す「統合新領域学府」が誕生しました。システム情報科学研究院に所属する教員は、これら2学府の教育の一部を担当しています。
システム情報科学府・研究院は情報科学(I)と電気電子工学(E)を両輪とし、世界トップレベルの研究と教育を進めています。基本理念として「I&E融合による学問体系の創出と社会貢献」を志高く掲げ、常に前進し続けるために、研究・教育の硬直・陳腐化を打破する永続的かつ柔軟な活性化制度の導入が必須と考えています。即ち、①学問体系の基盤分野で世界最先端の研究・教育を加速する「不易」体制の強化、及び②社会要請に応え、新しい研究領域を絶えず創成・展開する「流行」体制の創出の相反要請を可能とすることを目指して、九州大学が戦略的に推進する大学改革活性化制度のもとに、平成24年度に、既存部門から独立した「I&Eビジョナリー特別部門」を新設しました。
本部門は、ギガフォトン社製の量産レーザーを大学に設置し、ガスレーザーの新規応用技術の研究・開発を目的に設立された共同研究部門です。真空紫外、深紫外、赤外領域の高パルススエネルギーのレーザーを用いて、微細加工・ 薄膜結晶化・薄膜改質・クリーニング・ナノ粒子生成・直接描画など様々なレーザープロセスの研究を行います。
本センターは、ギガフォトン社製の高出力エキシマレーザー5台とタマリ工業社製のレーザー加工機やSCREEN社製のフラッシュランプアニール装置などを設置しており、世界有数の高出力光・量子照射システムを提供できる施設となっています。また九州大学における世界最先端の物理計測システム及びAIなどの解析設備とノウハウを有しており、これらが組み合わさることでスマート製造システムの社会実装を目的としている研究施設です。
「研究成果の社会還元を促進するため、社会実装に関わる研究をさらに推進する」という目標があり、光・量子プロセス研究開発センターは牽引する存在となっています。
量子コンピューティング技術は、現在のコンピュータを大きく凌駕する次世代コンピュータの実現手段として世界中で注目されています。本センターでは情報処理に使える道具としての量子コンピュータのあるべき姿を探求します。
量子計算アルゴリズム部門、量子計算ソフトウェア部門、量子計算アーキテクチャ部門、量子計算デバイス部門、量子計算応用探索・社会連携部門を設置し、システム情報科学研究院を中心とする九州大学の英知を活かして、これらの部門が密に連携した研究開発を推進します。そして、①情報処理基盤としての量子コンピュータのあるべき姿の探求、②新しい量子ビットの探索、③ハードウェアとソフトウェアの両面を捉えた量子人材育成、④量子コンピューティング技術の社会応用展開に貢献します。
「社会変革を起こす価値創造型半導体人材育成事業」における「半導体・集積回路の材料、設計、製造のスペシャリストであると同時に、社会のニーズや、社会変革に求められる半導体・集積回路を理解し、それを半導体・集積回路の設計・製造に反映できる『価値創造型半導体スペシャリスト』の育成」を遂行すべく、価値創造型半導体人材育成センターを新設しました。
本センターの活発な運用により、①社会変革を起こす次の半導体技術を担う人材「価値創造型半導体スペシャリスト」を育成します。
同時に、他学府・他学部の学生については、半導体・集積回路の基本知識を持ち、社会のニーズに接し、社会変革を計画し、それを実行することのできる価値創造型人材、すなわち、②「半導体の社会実装を通じた社会変革を担う人材」を育成します。
さらに、熊本大学、九州工業大学、及び九州半導体・エレクトロニクスイノベーション協議会といった学外機関とも協力し、他大学や高等専門学校の学生に対して、半導体製造及び関連分野の企業で、技術者として半導体産業基盤を強靭化できる価値創造型人材、すなわち、③「半導体の国内製造を担う人材」を育成します。
九州大学システムLSI研究センターは、高度情報化社会の基盤技術としてのシステムLSI技術を総合的に研究し、その技術体系の確立と社会の中でのこの技術の利用の方向を明確化することで、人類文明の発展に貢献することを目指しています。システムLSIは、21世紀の社会の設計に欠かせない技術であり、本センターは、新しいシステムLSI技術、特にその設計技術の方向性を明確にし、21世紀の社会のデザインに要素技術の側面から指針を与えることを目的とした研究施設です。全学共通ICカードプロジェクトや福岡県と共同で進めるシリコンシーベルト福岡プロジェクトなどを推進しています。平成16年11月より、設計企業が集積する百道浜地区の福岡システムLSI総合開発センタービル内にサテライトキャンパスを設置しました。
次世代の社会基盤として期待されています超伝導情報・エネルギーシステムの実現に向けて、創造的学術の推進と革新的技術の蓄積が欠かせません。このような背景の中で、超伝導システム科学研究センターは、システム情報科学研究院、工学研究院、総合理工学研究院、理学研究院などからの幅広い支援を得て、超伝導関連の基礎科学とその情報・エネルギーシステムなどへの応用を研究教育する学内共同教育研究施設として、2003年4月に発足しています。
本センターは、全学的な共同研究を基盤に研究所・大学・企業との全国的・国際的な共同研究を展開すると共に各種のプロジェクト研究・国際協力事業などを支援していきます。
九州大学情報基盤研究開発センターでは、計算、通信、情報セキュリティ、教育支援等、情報科学に関する幅広い分野に関して研究開発を行うと同時に、全国共同利用施設として、スーパーコンピュータシステム等の大規模計算機システムによる計算サービスを全国の研究者に対して提供しています。さらに情報統括本部の一員として、情報システム部と連携して九州大学内ITに関する一元的かつ効率的な投資と運用を行っています。
本センターは、九州大学が総括幹事を務める日本・エジプト間の国家事業である「エジプト日本科学技術大学(E-JUST)設立支援プロジェクト」(JICAプロジェクト)、および文部科学省特別経費「エジプト日本科学技術大学(E-JUST)新設における支援プロジェクト」を主体的に推進・実施する責任組織として、平成22年8月に発足しました。システム情報科学府では、このため電気電子工専攻及び情報知能工学専攻に新たに特定教育研究講座「電子通信工学講座」及び「情報通信工学講座」を設置し、専任教員6名を配置するとともに、同学府および他部局教員の協力を得て、E-JUSTへの教育研究支援、E-JUST教員・留学生の受け入れ、エジプト・日本間での産学共同研究の実施、本学とのダブルディグリープログラムの開発等の事業を推進します。
プラズマとナノ界面の相互作用を解明し制御できれば、従来実現できなかった高度なナノ材料・ナノ構造の創成に爆発的な発展をもたらします。本センターでは,プラズマとナノ界面の相互作用に関する基礎と応用に関する体系的研究を推進し、国際的中核研究拠点を確立します。ドイツ、韓国等の海外の大学・研究機関を含む国内外の産官学との共同研究および双方向国際教育を推進します。国内外の優秀な学生を受け入れて世界を牽引する人材に育成し、世界の産官学に供給することにより、九州大学の世界的研究教育拠点化の一翼を担います。
本センターは、近年の食や環境のグローバル化に伴う種々の問題に対処するために設置されました。
味覚センサ、嗅覚センサ、感覚生理学の3領域から構成され基礎研究から応用、開発、社会実装までを行う世界初の研究拠点として、味のデータベースである食譜(食品の楽譜)、被災地で人を検知するための匂いセンサ、五感を融合したセンサシステムの開発など、日々の健康に資する医療・健康科学の創出、ならびに安全・安心・快適を実現する新規有機・バイオデバイスの創製を目指します。
データサイエンスとは、様々なデータを数理科学技術を使って分析し、結果を判断し、さらにそこから新しい知見を導出することを目的としています。そういうと簡単そうですが、世の中には実に多様なデータがありますし、分析の目的も違うでしょうし、さらにそれらに応じてそこで使う技術も違ってきます。従って、データの性質を見極め、そこから判断に有益な情報や知識を抽出するために適切な技術を選び、時には新規に開発できるような人材 ~ データサイエンティスト ~ が、あらゆる分野において必要になります。
こうした必要性を鑑み、文部科学省のサポートによって、数理及びデータサイエンスを中心とした全学的な教育を行うセンターが本学を含む全国6大学に設置されることとなりました。
九州大学の強みを集約して、地球環境保全のために、人の移動・物流を担う航空機、自動車の低エミッション化・高効率化を目的として、電気推進システムを搭載した電動航空機と飛ぶ車の研究開発を行うとともに、関連新規産業の創生を目指します。また、研究開発とこれらの産業を担う人材の育成を図ります。
九州大学大学院システム情報科学府の前身であるシステム情報科学研究科は、従来の部局の枠を越えた新しい形の研究教育組織を目指し、平成8年4月に工学部電気工学科、電子工学科、情報工学科、総合理工学研究科情報システム学専攻、理学部附属基礎情報学研究施設、理学部物理学科の教官に、一部文学部、教育学部の教官をも加えて統合・改組し、情報理学専攻(教授5・助教授5)、知能システム学専攻(教授9・助教授9)、情報工学専攻(教授9・助教授9)、電気電子システム工学専攻(教授7・助教授7)、電子デバイス工学専攻(教授7・助教授7)、の5専攻をもつ独立研究科として設置されました。同時に大型計算機センター、情報処理教育センター、超伝導科学研究センターの教員が協力講座として加わりました。この改組は九州大学改革の大綱案に沿ったいわゆる「大学院重点化」の先頭を切ったものでした。
このようにして生まれた大学院システム情報科学研究科は、九州大学の学府・研究院制度導入に伴い、平成12年4月に、研究院(5部門)と学府(5専攻)とに再編成されました。平成11年4月に、従来工学部附属であった超伝導科学研究センターがシステム情報科学研究科附属のセンターとなり、学府・研究院制度導入の際、所属教員により本研究院の1部門を構成することになりました。なお、本研究院の教員は、工学部電気情報工学科および理学部物理学科情報理学コースの学部教育も担当しています。
以上のように、システム情報科学府・研究院は社会に大きな貢献をしてきましたが、急激に変化する社会ニーズに対応して、情報及びエネルギーの社会基盤を担う本学府の教育体制を再構築する必要性が社会や産業界から強く要請されています。さらに、今後ますます高度化するICT分野に対し産業界と大学が連携して指導的なICT技術者を養成する長期的なキャリアパスを形成する必要性も指摘されています。そこで、平成21年度からは、上記5専攻体制を情報学専攻、情報知能工学専攻、電気電子工学専攻の3専攻体制に、さらに令和3年度からは、情報理工学専攻と電気電子工学専攻の2専攻体制に改編し、時代の要請に応じた大学院教育を実現しています。また、システム生命科学府(専攻)および統合新領域学府にも協力し、新しい学問領域の創成に積極的に取り組んでいます。
さらに、九州大学が戦略的に推進している大学改革活性化のための新たな制度に基づいて、平成23年度にはギガフォトンNext GLP共同研 究部門を、平成24年度にはI&Eビジョナリー特別部門を設置しました。