
九州大学大学院システム情報科学府同窓会会員の皆様、そして本学府にゆかりのある皆様、令和8年度を迎えるにあたり、ご挨拶を申し上げます。本年は、1996年のシステム情報科学研究科発足から数えて30周年の節目の年にあたり、感慨もひとしおでございます。
昨今、生成AIの急速な発展、量子コンピューティング技術の進展、半導体産業の国内回帰と九州における産業集積の本格化など、情報科学と電気電子工学の分野はかつてないほどの変革期を迎えております。本年3月に閣議決定された「第7期科学技術・イノベーション基本計画」(2026〜2030年度)では、政府研究開発投資の大幅な拡充が掲げられ、「AI・先端ロボット」「量子」「半導体・通信」「フュージョン(核融合)エネルギー」等の6分野が「国家戦略技術領域」に指定されました。本学府が教育・研究の柱とするAI、量子、半導体、フュージョンエネルギーの各分野は、まさにこの国家戦略技術領域の中核をなすものであり、半導体・AI・エネルギーの三つの基盤技術すべてにおいて専門性を持つ本学府の役割は、国家戦略の中核として重要性を増しています。
第7期基本計画が掲げる「AI for Science」の概念が示すように、AIはもはや単なる研究支援ツールではなく、科学そのものの進め方を根本から変革する基盤技術となりつつあります。同時に、大規模言語モデルやAIデータセンターの電力消費は急激に増大しており、この「AI時代のエネルギー問題」を解決する鍵として、クリーンで無尽蔵なフュージョンエネルギーの実用化が世界的に注目を集めています。その実現には、超伝導マグネットシステムの高度化やパワーエレクトロニクス、リアルタイム情報処理技術など、本学府が強みとする「情報科学と電気電子工学の融合技術」が中核を担います。
本学府は30年にわたり時代の要請に応じて組織を柔軟に変革し、2021年度には情報理工学専攻と電気電子工学専攻の2専攻体制へ改組いたしました。生成AIや機械学習アルゴリズムの開発、量子コンピューティングにおける量子ビット制御と誤り訂正技術、フュージョンエネルギー関連の超伝導システムの高度化とエネルギー変換技術、半導体製造基盤技術としてのプラズマプロセス技術、さらには次世代パワー半導体やAI用高性能半導体のデバイス・プロセス技術など、国家戦略技術領域のすべてにおいて最先端の研究が進められています。価値創造型半導体人材育成センター、量子コンピューティングシステム研究センター、超伝導システム科学研究センター等での先端プロジェクトや、米国との半導体UPWARDSプログラムなどの国際連携も進展しております。
同窓会では、令和7年度に「第十六回優秀学生表彰」を実施したほか、「ISEE基金」を通じた学生支援・研究設備整備にも取り組んでおります。会員数は年々増加し、AI関連企業、情報・通信事業者、半導体メーカー、自動車・重工業メーカー、電力会社、政府機関など多様な業界で卒業生が活躍する産学官ネットワークとして存在意義を高めております。
本学府およびシステム情報科学研究院の活動は、ウェブページ https://www.isee.kyushu-u.ac.jp でご紹介しています。また関連する工学部電気情報工学のウェブページ https://www.eecs.kyushu-u.ac.jp でも高校生向けの動画を含め紹介をしていますのでご覧ください。さらに、2023年度より九州大学基金「ISEE(システム情報科学)基金」を創設いたしました。同窓生の皆様のご支援をお待ちしております。 https://www.isee.kyushu-u.ac.jp/kikin.html
30周年と第7期科学技術・イノベーション基本計画の初年度が重なる特別な年にあたり、半導体・AI・エネルギー技術を統合的に扱える世界でも稀有な教育研究機関として、本学府は中心的な役割を果たしてまいります。同窓生の皆様のますますのご活躍を祈念し、変わらぬご支援をお願い申し上げます。
システム情報科学府同窓会長 木須 隆暢